後期キャンペーンの後始末・その2


まあ、こういうのは時間を開けてしまうとヤル気が失せるので熱いうちに。
本日はことの真相サイド、前半戦です。いわばGMが用意したステージの初期条件みたいなものでしょうか。色々な意図も含めて解説していけたらと思います。

お手数ですが、先日の第一回を読んでいることを前提に話しますので、どうかご容赦を。

後期キャンペーンの後始末 - Strange/Tone


さて。一見全3回のショートキャンペーンなのだから高経験点を与えたと見えないことも有りませんが、意図は全く違います。

特殊ルール解説

PC諸氏にはこのステージにとどまる限り、主に前日公開のハンドアウトにちらっと出てきたこの街の“監視者”たる存在によって以下の特殊ルールが課せられます。

  • 時間の経過によってPCのレネゲイドは減退していきます。具体的にはセッションが終わるごとに経験点にして50点ずつ。
  • “監視者”が知覚できる範囲でエフェクトが行使された場合、“監視者”はペナルティをそのキャラに向けて宣言することでそのキャラの経験点を10点減少させられる。
  • 最終防衛機構として“監視者”本体が戦闘エリアに巻き込まれている場合、上記のペナルティが発動できなくなる代わりに“監視者”がイニシアチブを得るごとにその場に居るオーヴァードのキャラクターの侵食率が8D10ずつ減少し、0未満になった点数分は経験点の減少によって代行される*1
  • 以上3条項のいずれかによって経験点が0以下になったPCは全てのオーヴァードとしての力を失い、記憶改ざんされた後に一般人としてこの街で暮らすことになる。もちろんNPC化する。

これが本キャンペーンの特色のひとつ、逆成長ルールです。セッションが終わるごとに精算を行い、150点の経験点を減らしていく。全3回にて事態の解決が図られなかった場合はPC諸氏は晴れて一般人NPCと化してこの街で末永く幸せに暮らすのです。メデタシメデタシ(ぉ

これには一応真面目な意図という名の言い訳がいくつかございます。
前日に記したとおり、初期におけるPCたちの目的は微妙に違います。ですがハンドアウトだけではコンフリクトはしておりません。一つ目の理由は、急激に能力を落としたPCたちが同じ立場の他のPCたちを頼ることが妥当である状況を作るためです。少なくとも全員、この事態の解決という目的は共有できるだろう、という認識を危機感と共にPLに持ってもらうため、としておきましょうか。
二つ目としてましては、やはりPLの尻に火を付けるためです。PCたちの完全な協力体制が確保されているわけではない本キャンペーンとしましては、PC各自の自分たち個人の思惑と意思による積極的な行動が求められます(そしてそれこそが私が見たいものであり、このような半マスカレイド体制を敷いた理由です)。放っておいても事態は悪化し続けることを強く印象づけ、待ちを選択させないための措置ということですね。
なお、PL諸氏には逆成長ルールが公開された時点で(1話終了時点)キャンペーン中に経験点が戻るイベントが用意してあることは明言しております。まあ、そのイベントが確実に踏まれるかどうかについての保証はもちろんしませんでしたが。


そのうえでこのステージでの事件を運用するための副次的なルールが以下になります。

  • オーヴァードが外に対して連絡を取ることは出来ない。具体的にはレネゲイドのことにわずかでも触れる内容のことを外部に対して連絡しようとした場合、高難度の意志判定に成功しない限り“連絡したつもり”にさせられて、実際には何の連絡もしていないという事態になる。これは自動化されて街全体に広げられたフィールドによるものであり、“監視者”の意思や意識の有無を問わず発動する。
  • “監視者”は街を出ようとしたオーヴァードを察知することが出来、望むならば即座にその脱出を妨害できる。これは“監視者”が存命の限り抵抗のしようはない。
  • このステージに置いて《ワーディング》はその効果を為さない、既に上位の“監視者”によるフィールドが常駐しているためである。またこのステージに置いて《ジェネシフト》はその効果を発揮しない、高めようとしたレネゲイドが即座に霧散するためである。

上ふたつは言うまでもなく、このステージからの脱出や外からの別NPCや別組織の干渉を防ぐ目的によるものです。あくまで本キャンペーンをこのステージに限って運営するためのルールですね。最後のものですが、前者は当たり前のように使ってきた《ワーディング》が発動しないことによって街の異常を印象づけるための措置、ならびにUGNにオーヴァードがいないことを察知しにくくさせるための措置です。後者は“監視者”本体戦において8D10減少効果に対して簡単に解決されないための強権発動です。どれも結局は“監視者”の権限によるもので、彼が倒されると解除されちゃいますが……まあ、それはそれで構いはしないということで。

“監視者”について

さて、次は散々出てきた“監視者”とこの街のシステムが出来た経緯の説明です。

  • オルクスの能力者であり、本体は住宅街のエリアに一人暮らしの学生として住んでいる。もっともこれは単なるカバーであり、実態は全てのロイスを切り捨て街の運営だけに特化した存在。日がな外に出ることはなく自室にこもりそれこそ植物のような暮らしをしている、すでに食事など人間に必要な活動を取る必要はなくなっている。それ専用のEロイスを与えられ、衝動の代わりに街を可能なかぎり円滑に運営する意思だけを残されたジャームみたいなものだと思えば。
  • パーソナリティは20代後半の元・UGNの研究者だった青年。専門はレネゲイドビーイングについて。UGNチルドレンとして活動していた妹がジャーム化したことを契機に妹を連れてUGNを抜け、この街の地下に存在が推定された巨大なウロボロスのレネゲイドビーイング“ミズチ”と接触。彼の望みを叶える代わりにシステムの構築に協力してもらう契約を取り付け、システムによって妹を記憶を改竄した一般人としてこの街で平穏に暮らさせることに成功する。
  • 彼はシステムの権限によって、街のフィールドそのものを《アニマルテイマー》によって自身の支配下におき、《ハンドリング》を使うことで本体は移動せずに街の何処へも気配だけで登場することが出来る。また一度でもペナルティを与えたオーヴァードに因子を埋めておくことで、街に居る限り望むだけでそのオーヴァードがどこに居るか察知出来る。
  • 当然ながらUGNに所属する人間も全てすでにオーヴァードとしての力を失っており、記憶改ざんによって“監視者”の都合のいいように動く尖兵と化している。

つまり街全体を覆うフィールドと監視システムを運営しているのは“監視者”、ただし実際にレネゲイドの吸収を行っているのは地下に存在する“ミズチ”というわけです。以下、“ミズチ”の設定。

  • “ミズチ”の身は非常に巨大であり、この街の地下ほぼ全域に広がるほど。侵食率の名が示すとおり、身体が大きければそれだけ絶対量として多量のレネゲイドを取り込んでも率の上昇は抑えられる。これにより“ミズチ”はこの街に存在するオーヴァード全てのものという膨大なレネゲイドを取り込んでも、さほど侵食率を上げずそのまま循環し適宜昇華して侵食率自体は平易に保っておける。
  • “ミズチ”の望みはただひたすらに眠り続けること。地上で余計な騒動や特にオーヴァードたちの大規模な争いによって刺激されることの無いという“監視者”が提示した状況は彼にとっても望ましいものであり、“監視者”の提示したレネゲイド吸収システムの根幹を担う代わりにひたすらに眠り続けるという状況に落ち着いた。
  • なおあくまで権限まで含めて与えているのは契約による“ミズチ”の力による寄与が大きい。“監視者”が死亡した場合、オルクスの能力者でありかつ自発的にそれを望むならば“ミズチ”は喜んでそのオーヴァードを二代目の“監視者”とするための契約に応じる。
  • 参考までにまだ昇華されていない最近取り込まれたレネゲイドは“ミズチ”が眼を覚ますことによって本人のもとに戻る。要するに地下の彼に気づいて接触を持てれば*2力を失っている一部のオーヴァードはその力=経験点を取り戻すというわけです。

まあ、性格は傲慢で怠惰、彼の機嫌を損ねない限りに置いて鷹揚に応対してくれるという典型的な困った知性持ちクリーチャーです。おおよそこんな感じで奇妙に平穏なこのステージは成立しているというところです。
目算として事態の解決に向けたPCの障害として設定されている面と、それでも一部に交渉の余地を残すNPCとしての面があります。まあ“監視者”を単純に倒せる悪とか敵対的なジャームにしないのは…よくも悪くも私の趣味ですね。
まあそれでも予定ではUGN支部武装した一般人職員たちは数の暴力という形で1話目にどこかのタイミングで*3PCと戦闘を起こし150経験点のPC諸氏に華麗に蹂躙される役。“監視者”は二話目の終わりまでにはPCの誰かが接触して戦うかどうか(=“監視者”の目的を知り交渉の余地があると見なすかどうか)方針の決断を私に観覧させるための役。そして“ミズチ”には出たてのウロボロスエフェクトを満載に盛り込んだ強キャラとして、150点なりの力を取り戻したPCと激戦を繰り広げるラスボスとしての役目を割り振っています。したがって大体のケースに置いてワガママな“ミズチ”は暴れることを選択し大体のPCと敵対するように設定しております。ええ、9割5分以上でいずれにせよラスボス・“ミズチ”との戦闘は発生すると踏んでおりました……おりました…。


長くなったので今日はここまで。次回後半は事の発端や実際のシナリオ進行に関する目算、キャラごとのハンドアウトの解説などを予定しております。

*1:例えば侵食率24の状態で38点減少を喰らったら、侵食率は0で経験点は14点減少する

*2:強力な直接攻撃などかなり強引な手段をとるか“監視者”が死んでいるかでもないとそもそも起きませんが、彼w

*3:PCが仕掛けるならそれはそれ。仕掛けないならUGNから潜入したFHとして一番目立ったPCに襲撃をかける