後期キャンペーンの後始末・その4

う〜ん、思いついたときにはせいぜい2〜3回でまとめられるって思ったんだけどなぁ(苦笑)残りの全3回という過程でのシナリオ進行の目算とかハンドアウトの意図とか言い訳とかです。ひとまず一区切りですね。

後期キャンペーンの後始末 - Strange/Tone
後期キャンペーンの後始末・その2 - Strange/Tone
後期キャンペーンの後始末・その3 - Strange/Tone


さて。ステージの背景となる街ならびに主に登場するNPC諸氏については大体解説しました。残りはこれらを動かす予定とか目算とか、盛大なボクの言い訳タイムですねw

おさらい


まず簡単に構造をまとめておきます。細かいところなどは過去回をご参照のほど。

  • PCたちは150経験点の精鋭たるFHエージェント。連絡途絶したマスターエージェントの行方と起きているならば事件の調査・解決を上層部から言い渡される。セルはそれぞれ別で今回の件を調査するために集められた特別チーム。
    • ただし街に居るだけでセッション1回ごとに50点ずつ、“監視者”に“視られ”ている状態でエフェクトを使用するたびにペナルティが宣告され10点ずつ、最後に“監視者”本体と相対することで+α。経験点にペナルティを受けていきます。0点以下になったら記憶を改ざんされて一般人化。解除するためには地下のレネビを起こす必要あり。
  • 街は“監視者”が地下のレネビと契約して用意した特殊ステージ。居るだけで徐々にオーヴァードの力が削れ、最終的には一般人化する。彼の目的はジャーム化が解除された妹を含め、この街の平穏をずっと保つこと。レネビはそんな街の地下でずっと惰眠を貪っていたいだけ。
    • ただしマスターエージェントの香川が持ち込んだ賢者の石のせいで吸収システムが過活性を起こし、現状では加速度的に力が吸われる代わりに異常の隠蔽が完全ではない非常に不安定な状態にある。
  • UGN支部はあるが、実際にオーヴァードである人間はいない上で支部長が“監視者”の傀儡。香川は住宅街に潜伏中、じりじりと力を削られ八方塞がりだが、各種情報収集は進んでいる。


……ふむ、まとめてしまうと意外と短くすみますねぇ。仕方ないとはいえ、前の2回くらいはなんだったのやら(苦笑)

シナリオ目算(GM言い訳集)

もちろん、簡単な程度の目算でありこのとおりに進むことをGMである私はまったく頓着しておりませんが、まあ一応誰も主体的に話を別方向に持って行こうとしなければ“流れ”ぐらいは用意しております。

一話目

基本的にはPC達に街の“異常”を認識してもらうための回です。自分たちのキャラの把握とか、そういうことも必要でしょうから。きっかけとしてUGN支部を用意しました。彼らを調査しても良いですし、そっちのけにされた場合彼らの方からPCの襲撃にかかります。その過程で“監視者”は彼らを“視て”おり、そのシーン内でエフェクトを使用すればペナルティが入りますし、あるいは立ち回りの中で《ワーディング》を使おうとすればそれが使えないということでその原因を探っていくという方向に向かえます。こちらが用意したのは舞台だけ、この時点で能動的に動くのはUGN支部だけ、ということでGMたるボクの方もPCないしPL諸氏がどういう動きを見せるのか様子見の部分もあります。参考までにマスターエージェントの香川は農業地区へ向かう姿を目撃証言で得られるようにしてあります。(事実、彼は最初自身の調査目的のためにそちらから山の方へ出向いています)つまりクッションを置いて、その後の調査を続きで彼が住宅街に居ることが判明する形にしております。これは出来れば香川と接触することは早くてこの第一回のラストまで遅らせたい、という意図がありました。彼と接触してしまうと半分くらいのルールや街の現状について話さざるを得なくなるので、あまり早いと困ったのですねw

この回が終わるまでに黒幕たる“監視者”の存在をPLの大半以上が認識してくれればGMとしてはオッケーというくらいの感じです。なんにせよPCとUGN支部の部隊が本格的にぶつかったところでクライマックス。参考までにUGNの部隊はHP40点で装甲10点ガード値10点、達成値20〜30程度で各種武装を使いこなすヤツが8体です。ちょっと数が多いのが問題ですが、想定として侵食率70後半〜80前半でぶつける予定*1で、ガードなりドッジなり火力なり何かあればせいぜいがタイタス1〜2個もそれぞれ消費すればなんとでもなるという心づもり。
まあ、これに手こずる程度だと次回の“監視者”本体戦がとんでもないことになるのでGMとしてもPCの火力やコンボのテストという側面がありましたね。

二話目

起承転結で言えば承転いっきにこなすくらいの回w ただGMサイドからすれば最低限やってもらいたいのはひとり以上のPCが“監視者”本体と接触することです。そのためのルートとして前回倒したはずのUGN支部から得られる情報であるとか、マスターエージェントの香川を補足して得られる情報というふたつのルートでのとっかかりを用意しておきました。もちろんPLが独自の解決策を模索したならばそれが上手く探せそうなら別ルートに行きます。全体的に言えばこのキャンペーンにおいてこちらが用意しているイベントというのは極めて少ないです。待っても何も起きはしません。それに加えて、そろそろPCそれぞれの“欲望”やハンドアウトに基づく思惑が錯綜するころ、という目算もありました。こういった“個人行動”を発展させ解決していくことを考えるとこちらが用意するイベントというのははっきりいって分量的に邪魔なのですw なおあまりにもPL諸氏の動きが鈍いようならターンの経過により“監視者”を動かして尻に火を付けていく予定でした、まあ普通は今さら火を付けなくても急いでくれるのですけどね。

この回の目的は“監視者”の思惑とそれへの接触、ならびに街の“ルール”の謎解きになります。ペナルティと “監視者”の存在は知るでしょうが裏側にあるルールの存在や思惑はまったくわからないはずです。このあたりの表裏どちらでシーンを行うのか、とか“条件”があることを看破して“ルール”を推理してもらったり、確定ではないであろう“ルール”に引っかからないようにしながら本体の行方を追ってもらう立ち回りの妙を楽しんでもらうのがこの回の目的の半分です。さてもちろん今回のクライマックスは“監視者”本体と接触することがトリガーであり、これに関しては必ずしも戦闘なるとは限りません。なお当の“監視者”本体ですが戦うならば、前記の通り戦闘フィールドでは彼に手番を回すたびに侵食率が8D10減少し、0を割ったぶんは経験点で払ってもらいます。つまりロストしてしまうよりも先に本体を倒すことが要求される火力ゲームですw 彼はカームダウンと当たったらダイスペナルティを与える攻撃*2をしてくるだけであとはガードと装甲を生やすだけです。これにより彼の攻撃を避けるか、行動値13の先手を取るか、メジャーアクションにおいてダイスを15ヶ以上振れないキャラは為す術がなくなります。つまり強いは強いけどガードキャラで遅くて、攻撃のダイス数がそれほど多く無い香川は手詰まりになりますw なおPC連中は構造上この戦闘はタイタス使い放題ですのでタイタスを使えばダイスペナの問題は一瞬で解決しますからご安心を。
スペック的にはガード値20に装甲20点にHP100、復活とかダメージ無効とかはありません。中途で自分の《雨粒の矢》+《癒しの水》+αのコンボに自分を巻き込まない意味がないことに気づいた時には青くなりましたが、まあ上のUGN支部構成員くらい圧倒できるPC諸氏ならきっと倒せるでしょう(明後日をみつつ)。

三話目

さて、最後はおそらく高い確率で地下のレネビに対処することになるはずです。なんといってもレネビを起こさないとPCたちの経験点は戻りませんから。体の良い人質みたいなものです、仮にそのまま脱出したとしても私は元・150経験点でふんぞり返っていた0経験点近くのFHエージェントなんて哀れな存在に幸せな未来を用意する予定は毛頭ございません*3。お伝えしたとおり、地下のレネビの“ミズチ”様は(もちろんそうなるようにGMが設定したからですが)非常に困った性格の知性持ちクリーチャーです。この時点で“監視者”が生きている場合、直接“ミズチ”を起こすにはかなり無茶な手段を用いることになり、起こした直後“ミズチ”は激怒して起こしたヤツに襲いかかります。“監視者”が死んでいる場合、新しいシステムの管理人を用意しない限り*4彼は癇癪を起こして襲いかかり、PCを屈服させて新しい管理人を用意するよう脅迫するでしょう。最後に仮にPC同士が敵対してにらみ合ったり、全員一致で“監視者”サイドに付くことになったりで“ミズチ”を起こさなかった場合でも“賢者の石”の過剰レネゲイドにより暴走を始めた“ミズチ”はやっぱり暴れ始めます。

まあ結論から言えばこの回の目的は経験点を取り戻したPC達に存分に力をふるってボス戦をしてもらうことです。どのみち停滞させれば“賢者の石”により暴走、という結末が使える時点で何か抜け道でも無い限り、ボス戦を回避出来るのは新しい管理人を用意してそいつに香川+賢者の石が円満に街から出ていけることを了承させることしか有りません*5。ちょっと強引ですが、まあ9割5分方で巨大クリーチャーとのボス戦にする目算です。
データに関してはインフィニティコード所収のジャーム・ヨルムンガルドを元にボクの好みなようにアレンジしております。なにより例によってある程度以上弱体化させないとトンデモナイので(苦笑)HP350点で装甲がその気になったら65点くらい生えるように見える上にしっかり復活エフェクトまで備えているという。主に装甲値周りを落とし、シンプルに扱えるように細々とした余剰の部分をオミットしいくつかボクの好みでエフェクトを加えています。まあ150経験点のキャラが3〜4人で戦うことを想定していますから、ラスボスと考えればそんなものです、きっと。

ハンドアウト解説

さて、全文は以前に載せましたが要約すると以下のとおりです。

1)“欲望”を失ってしまったPC
2)“監視者”の存在を感じ取ってしまったPC
3)“賢者の石”があることを知っていてそれが欲しいPC
4)何でもいいから任務は成功させなきゃならないPC

では順番に解説。
1)ですが、最初に思いついたとはいえちょっとロールが難しいものを作ってしまったと思います。“欲望”があることは覚えているけれどそれがなんなのかわからなくなった、あるいはそのことを“欲望”だと実感できなくなった。というものです。ロールに困る方が取られたら、前者を採用して“欲望”はこちらで振って隠蔽。逆に“欲望”まで設定したそうな方が来られたら後者を採用するという目算です。これは街に来て行動開始した後に、吸収システムの過活性の影響でレネゲイドと一緒に吸われてしまった、という設定で経験点と同様に“ミズチ”を起こすことで取り戻せます。スタートでは原因がこの街にあるっぽいことしかわかりませんから、街の正体を探っていくというキャンペーンの本筋に対してモチベを与えたハンドアウトということになります。

次に2)。唯一、“監視者”が存在することを知ってしまっているPCです。一見有利っぽく見えますが、ボクの意図としては別にこれは純粋なボーナスではありません。セッション経過による自動経験点減少がわからないスタート時では半分以上のPLが行動の足を単純に鈍らせてしまう可能性があるからです。そして全体構造だけを俯瞰すれば、見に回ることは不利になるように作ってあります。まあ、とは言ってもやはり有利に使える人にとっては有利なのは確かです。動けばイニシアチブは握りやすいでしょう、ハンドアウト上目的を誘導していないのもこのハンドアウトのポイントです。

で3)。一番、コンフリクトの危険が臭うPCですね。これくらいのきな臭さは欲しかったという意図のもと作られた、香川が“賢者の石”を持っていることを知っているスタートです。ただしもちろんのことリスクもありますが、リターンも大きめです。なんせ目的を達成すればどこかで書きましたが、経験点減少を抑えながらプレイ出来ます。あとやはり“賢者の石”をが存在することを知って行動できるのは純粋なアドバンテージですね。代わりに繰り返しますが香川の処遇やPCの“欲望”次第によって他PCとの対立が起きかねないというのがリスクです。

最後の4)。わりと汎用というか内容は薄め、ですがねw とにかく脱出したり、成果なく帰ったりしたら後が無いPCです。積極的な行動とそれとないPC対立の抑止を方向性としてもたせたスタートといえましょうか。まあ実際の苦労に比して、他所のPCの勝手な単独行動に心労するようなポジションですねw 特に何事もなければそのまま事件を解決してしまえば良いのである意味楽は楽ですが、いざ割れだすと大変です。なお解決に関してはきちんと上に報告出来ればそれで良いので、別に香川の生死や街の真実に関してなどは適当に誤魔化しても上が納得出来る報告が出来れば大丈夫、と前もって伝えてございます。


つまりハンドアウトだけならば香川から“賢者の石”を奪って、“監視者”ならびに“ミズチ”をぶち殺して凱旋報告すれば全員の目的は達成されます。ハンドアウト上はw 以降、まとめと共にキャンペーン全体での目算と言い訳に譲りますw

総括

さて、察しの良い方にはおわかりでしょうがだからこそFHエージェントで横のつながりが無いPC達という初期設定なのです。この裏を見れば対立構造の無い上に流すだけ流されたら一本道なシナリオに、彩りを添えるのがPCたち個人個人の“欲望”というわけです。簡単なところでは“欲望”の種類によっては、2)の求める“賢者の石”を欲しがるPCは他にも存在しえませんか? 極論すれば今回のキャンペーンにおける私の目的は色々なFHエージェントの“欲望”が錯綜する構造を作ることです(そしてこれはいつものことですが、その上でのPC各自の選択が見たいとも言えます)。

初期の150点を与えた題目、「頑張ればひとりでも色々なことが出来るように」というのは建前です、嘘ではありません。実際、このキャンペーンでは各所に単独行動を行ったほうが有利である局面を示唆しています。そしてそうなったときに、そのうえで全3回という構成を考えたとき、経験点による成長は比較的些少です。そこで思いついたルールが“逆成長”になります。

経験点を減らしていくことに関しては折りにふれいくつかメリットというか意図を出しましたが、大きく纏めると、ひとつにだんだん単独行動を難しくしていくこと。もうひとつがタイムリミットの存在を強く意識させて、PCの積極的行動を誘発することです。全3回のインターバルは2回、これより1回でも多いと殴られかねませんし、これより1回でも少ないと流石に意味がありませんw 全3回しかないから、ということをせっかくだから有利に活かしたいという思惑も多少混じっていますね。全てはできるだけ実際のPC間対立は起きない可能性を高めながら、様々な思惑と“欲望”が錯綜することを期待している、と一応まとめておきますねw



さて、細かいところが抜けているかも知れませんがシナリオ提示編は以上です。質問は受け付けますよ? あとは実際どうなったか、をレポートしGMの目算がどうやって崩されるかを自嘲気味に晒しながらcielx先輩に最終話の結末をお伝えするだけです。

*1:参考までに彼らはオーヴァードではありませんから、この回のクライマックスでは衝動判定が起きません

*2:ベースは《雨粒の矢》ですが同時に《癒しの水》を加えPCのHPはほぼ確実に減らない安心仕様です、《リザレクト》の余地なんて許しませんw

*3:このことは折りにふれ、必要だと感じたらPLにはそれとなく伝えています

*4:前記のシステムの一部としてパーソナリティを剥奪されることを了承したオルクスの能力者、という条件です。

*5:なお“監視者”には香川を見逃す気は全くありません、というか余地があるのなら最初からさっさと放り出しているという