ノエルと白亜の悪夢(ネタバレ注意)

とりあえずyakusiクンがもの凄く警告していた意味が読んでとてもよくわかったので自分も警告。

注:別にどうしてもというのをあえて止めやせんが、こいつばかりはネタバレなしで読んでこそだと思う。自分は当然ネタバレなんか気にしないで感想書くというかネタバレを回避したら感想が書けん。

凄くよかった、それだけは確かだ。


今作ほど『リプレイだからこその面白さ』というのを意識させられた作品は過去にありませんでした。オリジンの最終巻も随分と自分の中では神認定な出来だったのですが、これがSSやらラノベやらではなくTRPGのリプレイだからこそ、という意味では下手すれば上回るやも。


トランが死にました。
『物語』として見るならばわりに“よくある”展開でしょう、色々なメディア、色々な『物語』でそういうのは見てきました。
ですがこれがTRPGのセッションであり、トランがPCであるということがこの展開にもの凄い感情移入できた要因なのだろうか、とそう思います。トランの*1選択、徐々に絶望感を増していく現実、そしてどうしようもないと“わかってしまった”他の熟練TRPGゲーマーふたりと展開に戸惑う力丸さんの様子が果てしなくリアルでした。

陳腐な言い方しか出来ない自分が恨めしいですが、話を創りあげるキャラとの距離が非常に近くその分ダイレクトに感情移入する、キャラクターが自分の前で生きている、それが自分がTRPGをこの上なく面白いと感じている要因なのだと、そんな単純なことを改めて認識させられました。最後のあたりは我を忘れてひたすら逆転の手は無いか、何とかトランが生き残って欲しい、と手に汗握りながら一気に読み進めさせられたものです。


さて、ここからはちょっと3つほどに視点を分けて感想を。

まずはリプレイを書いたことのある人間としての感想。この作品ほど地の文の使い方が見事、と感じた作品はありませんでした。良く考えればプレイ中のPL、GMのやり取りはリプレイ書きがどうこうするものでは無いしそこの良し悪しはセッションの良し悪しであってリプレイ書きの良し悪しでは無い。ならばこういう細かい地の文の入れ方をはじめ読んでいる対象に向けての見せ方を整えるのがリプレイ書きの良し悪しなのかなぁ、と色々敗北感。見事、ひたすら見事、“これ”で何年も何年も飯を食って来た男の凄みを感じさせられたような気がする。まだまだ自分なぞ精進が足りないぜ。
次にGMサイドからの視点での感想。ここはトランの選択を最大限に尊重する形でとっさに展開にそして戦闘構成にすら修正を加えられるきくたけの手腕に感服しました。自分も展開くらいならいくらでも変えられますが*2データをとっさに判別して戦闘のセットを考え直すのはもの凄い大変だし勇気のいることだと思います。あとがきに書かれたようにトランがとどめをさされてしまったのもほんの僅かな差、ほんの僅かな要因の積み重ね、ここまで出来るゲームバランスの感覚は見事の一言。これはこれで理想の境地だなぁ、と。
そしてPLサイドから見ての感想。今回はもうトランの選択が非常にカッコいい、ひたすらカッコいい、死を覚悟しながらも“キャラクター”を通すのは見てて震えが走ります。さりげなく「あきらめちゃだめですよ!」ってノエルというか力丸さんの叫びに感動したり、本当に丸三巻かけて絆を構築されてきてるんだなぁ、と実感したりして。もちろん前半で過去の因縁ある相手にひたすらカッコつけるエイプリルも最後の最後でマティアスを殴りつけるクリスも自分の出生の秘密に色々感情が翻弄されるノエルとかも凄いカッコよかったんですけどね。やっぱり死んだ人間には勝てない(微妙に意味違うか?w)


最後に、あとがきの「ノエル、クリス、トラン、エイプリル―――。笑いと共に始まった彼ら四人の旅は……もう二度と、取り戻すことは出来ないのだと」というくだりがもの凄い印象的でした。自分もついこの間、目の前でキャンペーン中に死なれたばかりなので、少しばかりはこのなんとも言えない感じが分かるような、そんな気がします*3。TRPGのリプレイだからこそ、凄い感情移入した作品でした。

*1:あるいは中の人な王子の

*2:そしてよく変えますが(苦笑)

*3:例のブライトナイトffの件。後からMD聞きなおすとどこまでいっても自分の戦術ミスが目立つ…賢しげにデータのことに口出したり戦術仕切ったりするのやめるべきだろうか(苦笑)